僕は女の子の唇に自分の唇を近づけた。その子は逃げなかった。というより、固まって動けないようだった。僕はその時のキスの感触をあまり覚えていない。自分の彼女の事を考えていた。後ろめたさと後悔と不安と好奇心が入り交じっていて、どこか冷めた感じだった。
僕は女の子の様子を探るように、背中に手を回して撫でた。座ったまま、お互いに少し腰が引けたようなぎこちない抱擁だった。
女の子は拒絶する訳でもなく、反応するわけでもなかった。どちらかと言うと緊張して固まっているのだ。
僕はその子が自分の事を好きだという気持ちを利用して、行為をエスカレートさせていった。ブラを外し、胸を撫で、シャツのボタンを外して、乳首を吸った。
ズボンを脱がして下着をずらした。
日曜日の夕暮れ、赤い日差しが差し込んでいた。
僕はその子を気持ちよくしてあげようと頑張っていじった。
でも、緊張のためか盛り上がらないまま、トーンダウンしていった。
もちろん僕はギンギンになっていたんだけれど、放出する気にもなれずにしまっておいた。
これ以上何かをやると犯罪のような気がしたのだ。この子を酷く傷つけてしまうような気がした。
例えて云うならば、道端にできたアリの行列を避けて歩くような感じだ。できれば無闇な殺生はしたくない。
僕は踏みつける直前のところで回避したのだ。
「こんな事になるなんて思ってなかった」そう言われて僕は困った。
「うん。僕も」
そうは言ったものの、来る時の僕はやる気満々だったのだ。
あの時の僕を突き動かしたのは性に対する期待と欲望。
今感じているのは虚しさ。
全然気持ちよくないし、興奮もしなかった。女の子はそんなこと望んでいなかったし、そういう関係になるにはそれなりの準備がいるということだった。
僕はこんな虚しいことをするのは二度とごめんだと思いながら、原付で帰路についた。
とはいっても、その後同じような過ちを繰り返すのであった。


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